いちかわファームが出来るまで
なぜブルーベリーの栽培を始めたのか
栽培を始める数年前から小さい川であるが大雨で川の土手が崩れ氾濫し雨が降るたび川の水が流れ込み耕作が出来なくなり耕作放地となっていた自前の農地があり、そこを何とかしたいと考え、須崎市に河川の修復工事を数年間訴え続けていたところ、近隣で行われる砂防ダムの工事と合わせて河川の修復工事を行ってもらえることになった。(須崎市に話しをして5年以上経過していた。)
河川の修復工事が終了し、何を栽培するか検討に入った。
当時はサラリーマンで休日のみしか農作業が出来ないことから、比較的作業時間の短い果樹を栽培することにした。
そこから具体的にどのような果樹を栽培するか検討した。
農地も1反弱(250坪程度)と果樹を栽培するには狭く収益を上げていくには、この地域で誰も栽培していないものが良いと考え、候補としてレモン、ブルーベリーがあがった。
両方とも国内で流通しているものは外国産が大半で国産は少ないことから国産であれば販売でも有利ではないかと考えた。
最終的にブルーベリーを選択したのは、当時から目に良い果物と言うことでブルーベリーがたびたびメディアに取り上げられており、今後も注目度が上がっていく果樹であること、また、このころは全国的にも少なかったブルーベリーの摘み取り体験のできる観光農園の開園など将来的に色々な展開ができる果樹であると判断しブルーベリーを栽培することを決めた。
ブルーベリー栽培は苦労の連続
栽培開始時は土耕栽培でスタートさせた。栽培を開始した翌年の夏、視察を兼ねて鳥取県にブルーベリー狩りのツアーに参加したところ、大きな鉢でブルーベリーを栽培しており、どの樹も大きく元気に生育していた。
帰宅後インターネットでこの栽培法を調べたところ、京都にあるオーシャン貿易が開発したポット溶液栽培であることが分かった。
オーシャン貿易に問い合わせたところ高知県内に導入事例があることを教えてもらい、早速視察に行きブルーベリー栽培の話、ポット溶液栽培のことを教えてもらった。
その後、色々と調べたところブルーベリーを栽培するにあたってポット溶液栽培は最適な栽培方法(ポット溶液栽培のメリットはこちら)であると判断し土耕栽培からポット溶液栽培へ変更した。土耕栽培をスタートさせた1年後の話である。
ポット溶液栽培をスタートさせて2年目頃までは問題もなく順調に生育し、びっくりするほど樹は大きく成長した。
ところが、2年を経過したころからか一部の品種で急に成長が止まるもの、枯れてしまうものなど問題が発生し始めた。先輩農家さんに聞いても原因が分からず解決策はなかった。
肥料の量、潅水時間、剪定方法の変更など数年色々試してみたが効果がなく品種変更のため植替えを決断する。(当初定植した半分以植替えすることになった。)
そのころブルーベリーポット溶液栽培の最大の敵であるコガネムシの幼虫の被害も出始めた。(コガネムシの幼虫はブルーベリーの根を食べブルーベリーを枯らしてしまう害虫)
こちらも決定的な解決策がなく農薬の使用、コガネムシの侵入を防ぐために樹の根本にネットを巻き付けたり、ポット表面を防草シートで覆ってコガネムシの侵入を防ぐなど、良いと思われることを色々と試してみたが、解決には至らず毎年十数本はコガネムシの被害が出ていた。
解決策がなく困っていたところ、全国を回ってブルーベリー栽培の普及・指導を行っている方(通称:ブルーベリー職人)からコガネムシの幼虫の特性から最初のことは鉢の上部に生育していることから上部にコガネムシの幼虫のエサを無くして生育をできないようにすればいいのではないかとのアドバイスをもらった。
その状況を作るには杉や檜の皮を5cmの厚さで敷けば良いとの結論になり早速行うことにした。
結果は良好で杉・檜の皮を敷いてからは、ほぼコガネムシの被害は出なくなった。それと同時に生育不良となる樹がほぼなくなった。
一般的に他の農園では年間数%は生育不良で植替えが必要となっているようだ。
当園の生育不良になる原因は高知の強い紫外線で表面の根が弱ることではないかと考えていたが杉・檜の皮を行くことで解消されたことから強い紫外線が原因との結論になった。
他の園でもこの方法と実施しようとしても杉・檜の皮が調達できなく断念するケースが多いが、幸い当園は近隣で友人が製材所を経営しており、いつでも大量に調達でき助かっている。
ここから栽培が安定し、毎年計画的に安定した収量を確保することが出来だした。
この間、ブルーベリーの栽培技術については県外の農園で実施されていた剪定研修会等に毎年参加し栽培技術を身に着けてきた。
その甲斐があって今では、県外から視察に来ていただける農園となった。
ブルーベリーの栽培法については各種書籍が販売されているがポット溶液栽培は書籍に書かれていることとはかなり異なった栽培方法を行っており驚かれる方も多い。
ここ高知県須崎市の気候に合った栽培技術を確立するまで7年程かかった。
栽培が安定したことで栽培面積を増やしていくこととした。
ポット溶液栽培を選択した時から将来的には耕作放棄地を活用して増園し、少しでも耕作放棄地を無くしていくと決めていたので毎年少しずつではあるが耕作放棄地を借り受け増園を進めていき当初の1反弱から約8倍の8反1400本の栽培となった。
栽培を続けていくと毎年色々な問題は起きるが今までの経験や全国の栽培者のネットワークを生かして解決している。
「安全・安心」のブルーベリーをお届けできるように、ここ数年は微生物や植物ホルモンついて勉強をしており将来的には無農薬(現在は年間1~2回農薬使用回数にカウントされない有機JAS適合資材を使用)でブルーベリーが栽培できるように日々研鑽している。